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狂犬病予防注射とフィラリア・ノミ・マダニ予防について

当院では、狂犬病の予防接種を4月から順次行っております。札幌市から届いた封筒をご持参の上、お越しください。注射後のアレルギーに備えて、平日の午前中に接種することをお勧めしております。

接種についてご不明な点や心配な点がございましたら、お気軽にスタッフにお伝えください。

 

ワンちゃん、ネコちゃんのフィラリア予防薬も処方しております。

同時にノミ・マダニの予防ができるオールインワンタイプも大変人気です。

ワンちゃんには錠剤タイプとおやつタイプがお選び頂けます。

ネコちゃんには背中につける液体タイプがございますので、飲み薬が苦手な子にも安心です。

フィラリアの予防期間は5月頃〜10月頃。ノミ・マダニは春〜秋に活発になります。まずはご相談ください。

 

今シーズンもすでにたくさんの方が予防薬を取りにきてくださり、入荷に時間がかかるお薬も出てきております。在庫がない場合もございますので、"前もってお電話"頂けますとお待たせすることが少なくなるかと思います。

札幌市発注による下水道菅布設工事に伴うお知らせ

2024年の7月から2025年の3月までの間、時々、当院正面の駐車場への出入りが規制されます。その際の駐車場への出入りに関しては当院スタッフにお申し出下さい。

ご来院の皆様にはご不便をおかけしますがご理解のほどお願いいたします。

なお、当院の野外駐車場はこれまで通りご利用になれます。

犬の振戦について

振戦(しんせん)とは本人の意識とは無関係に筋肉が勝手に動くことで発生する”ふるえ(震え)”を示す言葉で、言い換えると『ブルブル震えている』状態を振戦といいます。小刻みに早いスピードで震えます。人間が寒い時に震える様子をイメージしてもらえたら良いかと思います。

振戦の原因として大きく下記の原因に分けられます。

 

1.恐怖による震え

特に花火などいきなり発生する大きな音や、怖い思いをした場所に行くと発生します。病院に来ると震え出すなんてコも沢山います。これ以外でも飼い主さんが気が付かない些細な音や行動で起きることもあります。どのようなタイミングで震えるかを観察することも大切です。

 

2.体調不良による震え

内臓系の疾患(低血糖など)、胃腸の疾患、脳の異常や痛みで震えます。この場合、震える以外の症状がほぼ確実と言っていいほど認められます。原因となっている異常の治療をしてあげることで震える症状が落ち着きます。

 

3.上記以外の原因による震え

今回お話したいのがこの場合の震えです。この場合の震えは多くは原因不明の震えで、主にジャックラッセルテリアやマルチーズ、ウェストハイランドホワイトテリアといった特定の犬種もしくは老齢の犬で認められます。震える身体の部位に応じて3パターンに分類されます。

 

⚫︎全身が震える場合

最初は震えるだけですが、徐々に症状が進行し、立てなくなってしまう場合も少なくありません。特に抱っこして下ろした後に症状が一時的に悪化する場合が多いです。主に若齢の犬で認められます。

⚫︎頭が震えてる場合

急に頭が上下もしくは左右に動きだします。自然と落ち着く場合もあります。主に若齢の犬で認められます。

⚫︎後肢が震える場合

立っている時に震えて、横になったり、歩いている時には震えは落ち着きます。主に老齢の犬で認められる場合が多いです。場合によっては前肢も震える場合があります。

 

✔️診断は?

症状から診断しますが、体調不良による震えを除外する必要があるので、血液検査やMRI検査が必要になります。

 

✔️治療は?

全身が震えている場合はステロイドや免疫抑制剤による治療が必要になります。それ以外で鎮静薬や発作止めのお薬を使うことで症状が緩和する場合があります。

 

✔️どうしたらいい?

落ち着いて、どういった時に震えているのか記録してください。大抵の場合は病院でも症状が認められますが、病院という環境で震えが増悪してしまう可能性もあるため、震えている様子がわかる動画があると診断の大きな一助になります。

 

※発作と間違われやすい病気です。発作中は意識を失いますが、振戦は意識を失いません。アイコンタクトが取れるかどうか、オヤツに反応するかどうかなどを試してみてください。反応があれば発作ではない可能性があります。

 

犬猫の認知機能不全症候群(痴呆症)について

犬の認知機能不全症候群は『高齢化により一度学習した行動や運動機能の著しい低下により飼育が困難になった場合』と定義されます。もう少しわかりやすい言い方にすると『老化に関連した症状で、認知力と刺激への反応が低下し、昔できていたことができなくなっていく症状』と言えます。今回は皆さんがより聞き覚えのある『認知症』という言葉で説明しようと思います。

 

認知症の犬猫は脳が萎縮していることが知られています。また、人間のアルツハイマー病の原因の一つであるアミロイドの沈着が起こることも知られており、アルツハイマー病と同一とまでは言えないまでも類似した病態である可能性があります。

 

発症は犬であれば9歳以上、猫であれば11歳以上から徐々に認知症を発症するリスクが上がっていきます。特に日本犬での発症が多く知られていますが、ビーグルやマルチーズ、ヨークシャーテリアも好発犬種として知られています。

 

✔️症状は?

認知症の症状として夜泣き徘徊が特に有名かと思いますが、実際の症状は非常に多岐にわたります。

・意識状態の変化(ボーッとしているか、興奮している場合が多い)

・ずっと横になったり、伏せの姿勢をしている

・首を傾げている

・狭いところに入りたがる

・壁に頭を押しつける

・わけもなく鳴き続ける

・うまく歩けない(酔っ払いのような歩き方〜歩こうとしたら転ぶなど)

・うまく立てない

・立っていると両後肢が震える

など様々な症状が認められます。これらの症状は脳の萎縮の程度により変わってきます。脳の萎縮が重度であればあるほど症状は重度になります。

 

※実はこれらの症状は認知症以外の脳疾患(特に脳腫瘍)でも発生します。

そのため、これらの症状が認められた場合、「老齢だから認知症」と決めつけるのではなく、

他の脳の病気がないかどうか確認することが非常に大事です※

 

✔️診断は?

前述の症状や質問表による症状の数値化から認知症の有無を診断しますが、最終的にはMRI検査が必要になります。繰り返しになりますが仮に認知症以外の脳の病気があった場合でも症状と質問表の結果だけ見ると認知症に合致してしまう場合もあるため、最終的にはMRI検査が必要となります。

 

✔️治療は?

残念ながら人間同様に犬猫においても決定的な治療法はありません。そのため可能な限り進行を遅らせること問題となっている症状を抑えてあげることが治療目標になります。そのための方法として下記のようなものが挙げられます。

 

1.怒らないでよく褒める

トイレを失敗したり、異常行動に対して怒ってしまうとより症状が顕著に現れてしまいます。逆にトイレが成功した場合や、飼い主さんの希望する行動をしたらおやつをあげるなどして沢山褒めてあげましょう。

2.生活環境の改善

滑りにくい床や段差をなくすなどの工夫をしてあげてください。ですが、大きく部屋の模様替えを行なったり、いきなりトイレの場所を変えると犬猫が混乱するので注意しましょう。ストレスを感じることなく、静かに過ごせる環境を準備してあげるのも大事です。

3.心身への刺激を与える

少しでもお散歩に連れて行ったり、ペットボトルにおやつを入れて遊ばせるなど可能な限り刺激を与えてあげましょう。

4.食事内容の変更

ビタミンEやDHAやEPAといったオメガ-3-脂肪酸を多く含んだ食事に変えてみるのも良いでしょう。これらが多く含まれるサプリメントや療法食があります。

5.薬物療法

抗うつ薬や行動治療薬などが存在しますが、これらも基本的には対症療法であり、症状を抑えるのが目的となります。特に夜鳴きがひどい場合などはこの薬物療法が効果的になります。

 

どれか1つだけを実践するのではなく、様々な方法を無理のない範囲で組み合わせることで、治療が上手くいく可能性が上がります。

 

犬の肺高血圧症について

肺高血圧症とは肺に血液を送る肺動脈という血管の圧力(血圧)が上昇する病態を言います。肺高血圧症になると肺動脈が変性(リモデリング)を起こし、肺動脈の圧力(血圧)が上昇します。その結果、肺に上手く血液を送れず、全身に酸素をしっかりと運べなくなってしまいます。最悪の場合、死に至る病気です。

 

 

✔️原因は?

様々な原因が挙げられますが、大きく下記の5パターンに分けて考えていきます

 

第1群:肺動脈性肺高血圧症

-特発性、家族性、フィラリア症、先天性短絡性心疾患、薬物、中毒

第2群:左心不全による肺高血圧症

-僧帽弁閉鎖不全症、心筋疾患

・第3群:肺疾患および低酸素血症による肺高血圧症

-慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患など

・第4群:肺血栓塞栓による肺高血圧症

-血栓症

・第5群:原因不明の肺高血圧症

-様々な要因が重なった結果発症すると考えられている

 

中でも第2群による肺高血圧症が多く、肺高血圧症の犬の約50%がこれにあたるとの報告もあります。

僧帽弁閉鎖不全症は特に小型犬で多く認められる進行性の疾患で、病気が重症化すると肺水腫になって呼吸困難になるだけではなく、肺高血圧症に罹患するリスクも高くなります。

 

 

✔️症状は?

一般的な症状として頻呼吸、呼吸困難やチアノーゼが挙げられ、重度なものだと失神を起こす場合もあります。

 

 

✔️診断は?

主に心臓超音波検査で診断します。肺高血圧症があると心臓の右側(右心系)に負担がかかります。そのため、心臓超音波検査で下の図の様な変化がないかどうかを確認します。肺高血圧症があれば血液検査やレントゲン検査などを行い、原因追及をしていきます。

※心臓超音波検査による肺高血圧症の診断基準はいくつかあり、その基準を満たす項目が多ければ多いほど肺高血圧症である可能性が高くなります。

 

 

✔️治療は?

写真にあるような薬による内科治療が基本となります。最初にお話した通り、肺高血圧症は肺動脈の血圧が上昇してしまった状態を言います。そのため、この肺動脈の血圧を下げる薬を使用します。加えて肺高血圧症を起こしている基礎疾患があればこちらの治療も同時に行います。

 

 

 

※筆者は過去にフィラリア感染症により肺高血圧症となった症例を1例経験しています。

予防で防げる病気があります。それも命に関わる病気です。しっかりと予防しましょう。※

猫の伝染性腹膜炎(FIP)について

猫の伝染性腹膜炎(FIP)はコロナウイルス(※新型コロナウイルスCOVID-19とは別です)によって発症する病気で、特に2歳以下の若い猫に多い病気です。また、純血種は混血種よりも発症率が高いとされています。

 

✔︎症状は?

症状は元気食欲の低下、発熱、下痢、心不全、呼吸困難、腹水、胸水、ふらつきや発作などの神経症状など非常に多岐にわたります。特に初期はFIPに特徴的な症状を示さず、元気食欲の低下や発熱など様々な病気で認められる症状のみを示します。病気の進行スピードははやく、早ければ発症から9日間で死亡してしまう場合もあります。

 

 

【写真はFeline Infectious Peritonitis Diagnosis Guidelines,JFMS,2022より引用】

 

 

✔︎診断は

血液検査、画像検査(レントゲン検査と超音波検査)、異常な貯留液(胸水や腹水)があれば貯留液の検査などから判断します。これらの検査からFIPが疑われた場合は、異常な貯留液中、もしくは組織の一部を採取し、そこに病気の遺伝子がないかどうか検査することで診断します。しかし、組織の一部を採取するには全身麻酔が必要になり、FIPの症例に全身麻酔をかけることは危険度の高い行為になります。そのため、異常な貯留液中に病気の遺伝子がないかどうか検査する場合がほとんどです。

 

※遺伝子検査で陽性の場合はFIPと確定出来ますが、陰性の場合は必ずしもFIPを否定できるわけではありません。

 

 

✔︎治療は?

今までは治療法のない不治の病でしたが、近年、モヌルピラビルという治療薬が登場し、不治の病ではなくなりつつあります。この薬は人体薬ですが、猫ちゃんに使用しても安全性が高く、治療効果も高い薬です。

 

 

当院でもFIPの治療薬を導入しました!これで今まで治療出来なかった病気が当院でも治療可能になりました!今までは大学病院に行ってもらっていたため、治療開始までにさらに時間がかかってしまっていましたが、これからは当院で迅速な対応が可能になりました!!

 

 

 

■本当にFIPかどうか

この病気の診断治療を進めていくにあたり、最もネックになるのが『本当にFIPかどうか』です。遺伝子検査を行えばわかりますが、結果が出るまで時間がかかってしまいます。先にも述べた通りFIPは極めて進行スピードの早い病気です。そのため、遺伝子検査結果を待っていると手遅れになってしまう場合があるため、様々な検査を行い、1つでも多くのFIPを疑う証拠を集め、遺伝子検査結果を待つ前に治療を始める必要があります。

犬の免疫介在性多発性関節炎について

犬の免疫介在性特発性関節炎とは免疫機能の異常により、突如として自身の免疫が関節にある滑膜という部位を異物と認識し、攻撃することで発症する病気です。ミニチュアダックスフンドやトイプードル、バーニーズマウンテンドッグなどが好発犬種として知られています。また、秋田犬やチャイニーズシャペーイは遺伝による関節炎の発症も知られています。犬の世界で免疫介在性多発性関節炎といった場合、『特発性免疫介在性多発性関節炎』『リウマチ様関節炎』の2つの疾患が原因のほとんどです。ごく稀に、全身性エリテマトーデスという病気の症状の一つとして関節炎を発症する場合もありますが、今回は代表的なこの2つの疾患についてお話します。

 

 

 

特発性免疫介在性多発性関節炎

 

✔️症状は?

5歳前後での発症が多いとされており、手首と足首の関節での発生が多いです。歩行時の異常や跛行(ビッコ引く)が主な症状ですが、中には跛行症状を示さず、発熱や元気食欲の低下といった症状のみを示す犬もいます。これらがメジャーな症状ですが、頚椎と言われる首の骨にも滑膜が存在するため、ごく稀に首の痛みを示す犬もいます。

 

✔️診断は?

診断には関節液の検査(関節穿刺)が必要です。この検査は大人しい犬であれば無麻酔で実施可能です。

 

✔️治療は?

本疾患の治療はステロイドや免疫抑制剤による内科治療がメインになります。この病気の場合、関節の炎症が起こるだけで、関節にある靭帯が破壊されることは極めて稀なので多くの症例で治療がうまく行けば良好な治療経過が認められます。うまく付き合って行く必要のある病気ですが、中には薬をやめても大丈夫な犬もいます。

 

 

 

リウマチ様関節炎

 

✔️症状は?

中年齢以降での発症が多いとされています。本疾患も手首と足首の関節に発生しやすく、特発性免疫介在性多発性関節炎と同様の症状を示しますが、人間のリウマチ同様、関節の靭帯や軟骨が破壊されるので発見が遅れると手首や足首が「ハの字」になります。

 

✔️診断は?

診断には関節液の検査と血液検査、レントゲン検査が必要になります。いくつかの診断項目があり、診断項目が多く一致するほどリウマチ様関節炎の可能性が高くなります。

※病気の初期段階ではレントゲンでの変化が認められないため、特発性免疫介在性多発性関節炎として治療していたけど徐々に病気が進行し、後からリウマチ様関節炎だったと判明する場合もあります。

 

✔️治療は?

本疾患の治療も同様にステロイドや免疫抑制剤による内科治療になりますが、進行性の疾患であるため、治療目的は"治す"ではなく"進行を遅らせる"になります。