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犬の乳腺腫瘍について

犬の乳腺腫瘍は約50~80%が良性と言われています。特に10歳前後での発生が多いですが、より高齢で発生した乳腺腫瘍は悪性である可能性が高くなります。犬の乳腺腫瘍は腫瘍性疾患の中では比較的遭遇することの多い疾患です。

 

ちなみに......犬の乳腺は左右に5つずつあります

 

犬の乳腺腫瘍の発生と性ホルモンは関係があると言われており、2回目の発情までに避妊手術をすることで乳腺腫瘍の発生率を大きく下げることが可能です。特に良性の乳腺腫瘍の場合は、性ホルモンの影響により増大傾向になると考えられています。

発生率を下げることができるのは良性の乳腺腫瘍だけで、悪性の乳腺腫瘍の発生率は下げることが出来ません

 

 

✔️症状は?

基本的には無症状で、飼い主さんが偶発的におっぱいに腫瘍(しこり)を発見する場合がほとんどです。しこりを触って嫌がったり、痛がったりする場合は腫瘍ではなく感染や炎症による乳腺炎の場合が多いです。しかし、悪性の乳腺腫瘍の中でも炎症を起こす炎症性乳癌という病気があります。これを発症すると、しこりは赤く腫れ、痛がったり、元気・食欲の低下が認められるようになります。

 

✔️診断は?

確定診断には手術が必要になる場合が多いですが、細胞診(針を刺す検査)でも診断がつく場合もあります。しかし、腫瘍の一部のみの検査を行う細胞診では診断の正確性を欠くため、きちんとした診断や良性・悪性の判断には手術で腫瘍全体を切除し、検査する必要があります。

 

✔️治療は?

経過観察も可能ですが、基本的には手術が必要になります。手術の方法は年齢や腫瘍の状態に応じて決める必要があります。また、まだ避妊手術をしていない場合は、同時に避妊手術を行う方が理想的です。手術の方法は猫の乳腺腫瘍についてを参照ください。

炎症性乳癌を発症した場合は有効な治療法はなく、痛み止めや食欲増進剤などの対症療法を行いますが、進行が非常に、亡くなってしまう場合がほとんどです。

 

 

◾️経過観察のリスク◾️

犬の乳腺腫瘍は確率的には良性が多いですが、良性の乳腺腫瘍が悪性に変化する場合があります。そのため、"小さい腫瘍だからちょっと様子みよう"では適切な治療介入のタイミングを逃す危険性あります。しこりが小さければ手術の傷口も小さく済む(局所切除)ため、症例の年齢や腫瘍のサイズ、個数、増大スピードなどの要因を考慮して治療戦略を考える必要があります。

 

 

高齢での麻酔はより危険が伴うため、乳腺腫瘍の発生率を下げることが大事です。そのためにも、適切なタイミングで避妊手術を行うようにしましょう。

犬猫の多飲多尿について

多飲多尿とは読んで字の如く、『水をよく飲むこと』『オシッコをよくすること』をいいます。“トイレに行く回数が増えた=オシッコの量が増えた”とはならないため、オシッコの量を正確に測定するのは困難です。そのため、今回は多飲についてお話しします。

 

 

✔️水をよく飲むの定義は?

なら1日で体重1kgにつき100ml以上

なら1日で体重1kgにつき50ml以上

の水を飲むと『水をよく飲む』になります。つまり体重5kgの犬であれば1日500ml以上水を飲むと多飲ということになります。

※猫はウェットフードでも水分を取れるため飲水量の測定が困難な場合もあります※

 

✔️水を沢山飲むことの何がいけないの?

多飲多尿病気のサインです。主に副腎皮質機能亢進症糖尿病高カルシウム血症子宮蓄膿症腎臓病甲状腺機能亢進症など体のホルモンバランスやミネラルバランスが乱れる疾患で発生することが多い症状です。いずれの場合も病気の初期症状として認められる場合が多く、これらの病気が進行するにつれ、最悪の場合、命に関わる状態になる病気もあります。

 

✔️診断と治療は?

血液検査と尿検査を基準に、必要に応じてX線検査や超音波検査、ホルモン濃度の測定をおこない、診断します。その結果から多飲多尿の原因を追求し、原因疾患の治療を行います。

※病気の種類によっては1回の検査だけでは診断が付けれない場合もあり、繰り返しの検査が必要になる場合もあります。

 

 

※水を沢山飲むというのは病気のサインとして見落とされやすい症状です。以前より水をよく飲む気がするけど、ご自宅で飲水量を上手く測れないという場合は、早めにご相談ください※

 

犬猫の膀胱炎について

膀胱炎とは何らかの原因で膀胱に炎症が発生した状態のことを言います。この膀胱炎の原因となる『何らか』として細菌感染、膀胱結石、膀胱腫瘍、膀胱奇形そして猫に特有の特発性(原因不明)が挙げられます。ですが、いずれの場合でも最終的に細菌感染を起こしてしまう場合がほとんどです。

そのため臨床的に膀胱炎は下記の3つの場合に分けて考えます

 

 

①単純性膀胱炎

1~2週間の抗生剤治療で治る細菌性膀胱炎で、その後に短期間で膀胱炎を繰り返すことがない膀胱炎を言います。大抵の場合は何が原因で細菌感染が起きたか分かりません。

 

②複雑性膀胱炎

1~2週間の抗生剤治療で治るが、抗生剤をやめると短期間で膀胱炎を繰り返す。もしくは1~2週間の抗生剤治療でも治らない膀胱炎を言います。この場合、膀胱炎を起こしやすくしている基礎疾患(膀胱結石、膀胱腫瘍、ホルモンバランスの異常や特発性)が存在している場合があり、膀胱炎以外の検査と治療が必要になる場合があります。何回も膀胱炎を繰り返すと膀胱の粘膜が傷ついてしまい、膀胱そのものの抵抗力がなくなり、細菌感染を起こしやすくなってしまいます。

これは外陰部が埋まってしまうことで細菌性膀胱炎を繰り返しやすくなってしまう外陰部低形成というメス犬に特有の疾患の手術前後の写真です。このように、原因によっては手術が必要になる場合もあります。

 

③無症候性膀胱炎

オシッコに細菌はいるけど、その細菌が悪さをしていない膀胱炎を言います。この場合、抗生剤治療は不要な場合が多く、定期的な経過観察を行います。

 

 

 

✔️膀胱炎の症状は?

血尿、頻尿(何回もトイレに行く)、尿の異臭、排尿時の痛みなどが挙げられます。オシッコが溜まっていなくても何回もトイレに行くため、トイレに行くけどオシッコが出ないという尿路閉塞と似た症状の場合もあります。

 

 

 

※膀胱炎を放置しておくと細菌が腎臓まで逆流し、腎盂腎炎という最悪の場合、命に関わる疾患に発展する可能性があります。しっかりと治療をしましょう※

ロイヤルカナンの食事療法をご利用中の方へ大切なお知らせです

2024年10月以降から、ロイヤルカナンの食事療法食は動物病院と公式・認定オンラインストアのみでのお取り扱いとなるようです。なお、現在公式オンラインストア(以前に当院の病院IDを登録した)をご利用されていた方も、再度『かかりつけ動物病院への登録』が必要となりますので、よろしくお願いします。かかりつけ動物病院登録サイトhttps://ks-pet-health-link.jp/

札幌市発注による下水道菅布設工事に伴うお知らせ

2024年の7月から2025年の3月までの間、時々、当院下の駐車場への出入りが規制されます。その際の駐車場への出入りに関しては工事作業員に声をかけ誘導してもらってください。

ご来院の皆様にはご不便をおかけしますがご理解のほどお願いいたします。

なお、当院の野外駐車場はこれまで通りご利用になれます。

犬の体表に発生するヘルニアについて

今回は犬の体表に発生するヘルニア(鼠径ヘルニアや臍ヘルニア、会陰ヘルニアなど)についてお話しします。このヘルニアは腹筋やお尻周りの筋肉が裂けて、内臓脂肪や腸、膀胱などが飛び出てしまう病気です。イメージはこのような感じになります。特に臍ヘルニアは『でべそ』みたいなイメージです。

この絵では小腸が飛び出ていますいが、先にも述べたとおり、内臓脂肪や膀胱などが飛び出てしまう場合もあります。このヘルニアの発生部位は大きく下図の3箇所に分けられ、発生部位とヘルニア孔のサイズで飛び出るモノや症状が変わってきます。

 

✔️お尻周りに発生した場合(会陰ヘルニアの場合)

主に大腸が飛び出てしまい、症状としてはしぶり(何回も排便姿勢をとる)や排便困難が認められます。まれに膀胱が飛び出てしまう場合もあり、その場合、排尿がうまくいかなくなり、命に関わる事態になる可能性もあります。このヘルニアは特に未去勢雄で多く認められ、早期の去勢手術で本疾患の発生率を減少させることが可能です。

 

・治療について

年齢によっては内科治療も行いますが、基本的には、お尻周りの筋肉を糸で縫って孔を塞ぐ手術が必要になります。未去勢の場合、同時に去勢手術も行います。

 

 

✔️おへそと内股のトコロに発生した場合(臍ヘルニア、鼠径ヘルニアや大腿ヘルニア)

主に内臓脂肪が飛び出てしまいますが、小腸が飛び出てしまう場合もあります。小腸が飛び出ていても無症状の場合もありますが、重度の場合、飛び出た小腸が壊死を起こしたり、捻れたりして急を要する事態になる可能性もあります。特に飛び出たものが押しても元に戻らない場合や、触って痛がる場合は早急な対応が必要です。小腸が飛び出て悪さをしている場合の症状として吐き気や腹痛が挙げられます。

 

・治療について

孔が小さく、内臓脂肪だけが出ている場合は、無治療でも問題ありませんが、孔が大きい場合や小腸が飛び出ている場合には手術が必要になります。こちらも、同様に筋肉を糸で縫って孔を塞ぎます。