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猫の乳腺腫瘍について

猫の乳腺腫瘍は90%が悪性(乳腺腺癌)で、特に10歳前後の猫で発生率が高いとされていますが、これより若い年齢での発生もあります。猫の乳腺腺癌は進行が早く、早急な治療が必要な疾患です。また、高確率で肺転移が起こります。猫の腫瘍疾患としては比較的遭遇することの多い疾患です。

 

ちなみに.....猫の乳腺は左右に4つずつあります

 

猫の乳腺腫瘍の形成と性ホルモンは関係があると言われており、1歳以上で避妊手術をした猫と1歳未満に避妊手術をした猫を比較すると、1歳未満に避妊手術をした場合は乳腺腫瘍の発生率を90%近く下げることが出来ます。実際、猫の乳腺腫瘍の大部分は未避妊だったという報告もあります。

 

✔︎症状について

肺転移を起こすと呼吸困難などの症状が認められますが、通常は無症状で、腹部にシコリが見つかるだけの場合がほとんどです。

 

✔︎診断について

乳腺腺癌の確定診断には手術が必要ですが、細胞診(針を刺す検査)を実施することで乳腺に発生するその他の腫瘍と区別できる場合があります。

 

✔︎治療について

外科手術による摘出が第一選択の治療になります。猫の乳腺腺癌は悪性度が高く、転移や再発を防ぐため、腫瘍を含めた広範囲の摘出が推奨されており、摘出方法は大きく分けて下の図のように3パターンがあります

 

片側乳腺全摘出術(図1)は腫瘍のできた側の乳腺を全て摘出する手術方法です。この手術による治療を実施した場合、平均の生存期間は約300日とされています。一方で段階的片側乳腺全摘出術(図2)と両側乳腺全摘出術(図3)は腫瘍が出来ていない側の乳腺も全て摘出する手術です。前者は2回に分けて乳腺を摘出する方法で、後者は1回で両方の乳腺を摘出するという違いがあります。この2つの場合の、いずれの手術方法でも平均の生存期間は約540日と同じ日数が期待できます。そのため、麻酔は2回必要になりますが、当院では術後の合併症の点から段階的片側乳腺全摘出術を推奨しています。また、術後に抗癌剤治療を実施することでさらなる生存期間の延長が期待できます。また、抗癌剤以外にも免疫療法による術後の補助療法も可能です。

 

 

※猫の乳腺腺癌は腫瘍のサイズが大きければ大きいほど、数が多ければ多いほど積極的に治療しても生存期間が短くなってしまいます。腹部に異常なシコリを発見した場合はすぐに病院を受診しましょう※