犬猫の股関節脱臼は正常の股関節から見て、①上方向(頭背側方向)に脱臼してしまう場合と、②下方向(腹尾側方向)に脱臼してしまう場合の2パターンあります。
✔️症状は?
脱臼方向にかかわらず急性の跛行(ビッコ)を示します。大体の症例で後肢を地面につけることができなくて、完全に足あげてしまいます。また、よく見ると足先が正面ではなく、変な方向を向いています。
■写真①の上方向(頭背側方向)の脱臼について
この方向への脱臼は後肢に垂直方向の力が加わった時に発生します。この方向への脱臼が腹尾側方向の脱臼よりも発生率が高いです。脱臼の治療方法は全身麻酔をかけて用手で脱臼整復する方法と、手術で脱臼を整復する方法の2種類があります。教科書的には手術をする前に用手で脱臼整復を行い、それでも脱臼してしまう場合には手術と言われていますが、用手で脱臼整復を行なった場合の再脱臼率は40%とされており、脱臼整復後の包帯による皮膚炎などの合併症の発生率も高いことから、手術による脱臼整復を推奨します。
■写真②の下方向(腹尾側方向)の脱臼について
この方向への脱臼はフローリングなど滑りやすい場所で後肢が滑り、『ハの字』に股関節が開きすぎることで発生します。この脱臼も用手で脱臼整復する方法と、手術で脱臼整復する方法がありあすが、この脱臼は用手による脱臼整復による成功率が80〜90%と非常に高いため、まずは用手による脱臼整復を行い、それでも脱臼してしまう場合に手術を行います。
※※※股関節の形成不全や股関節に関節炎が認められる場合※※※
この写真のように生まれつき股関節の成長が不十分(股関節形成不全)があって脱臼してしまう場合や、股関節の骨関節炎が重度な場合は、脱臼整復をしてもすぐ再脱臼してしまったり、骨関節炎による痛みが残ってしまうため、脱臼しても整復はせず、赤線のラインで骨を切って"関節を治す治療"から"痛みを除去する治療"へ治療方法を変更します。