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動物には日常的に発生しうる怪我や病気から身を守るため、自分自身で傷や病気を修復する自己治癒能力が備わっています。
身体にはこのような自己修復を日常的に行っている細胞が存在し、「幹細胞」と呼ばれています。
幹細胞は①あらゆる性質の細胞に性質することで損傷部位を補ったり、②組織を修復する物質(生理活性物質)を出すことで本来持っている治癒能力を向上させます。
加えて幹細胞には、③炎症・損傷を起こした部位に集まるという性質があります。このような治癒が必要とされる部位に集まって治癒を促進してくれる役割を例えて「小さなお医者さん」と表現されることもあります。
イヌの脂肪由来幹細胞
(位相差顕微鏡写真)
幹細胞療法は、このような性質を持つ幹細胞を体外で数多く増やして体内に戻すことで「自己治癒能力を上げ、怪我や病気を治療する」ことを目的にしています。
治療に用いる幹細胞は「間葉系(かんようけい)幹細胞(以下幹細胞)といいます。幹細胞は骨髄・胎盤・脂肪などに含まれています。その中でも皮下脂肪には幹細胞が多く、採取も簡単で、培養をしても容易に増えるため、ペットの医療では広く治療に使われています。
投与による副作用はほとんどありません。投与した幹細胞が血中で全身を巡り、患部に到達します。幹部で作用し、幅広い疾患に適応が期待されます。
麻酔下でビー玉大の脂肪を採取し、幹細胞を抽出します。細胞は2週間かけて培養します。体外で数多く増やした幹細胞を洗浄し、点滴や注射によって体内に戻します。
2週間→1週間→1週間の間隔を経て、細胞を投与します。
幹細胞が分泌する組織修復因子によって、患部の修復を促し、麻痺の改善や歩行の回復を目指します。
幹細胞の分泌する抗炎症物質の作用で炎症を緩和し、ステロイドや免疫抑制剤からの離脱を目指します。
幹細胞が骨の細胞や、栄養を運ぶ血管に変化することによって、治りにくい骨折部位の修復を促します。
幹細胞の出す組織修復因子の作用で炎症を抑え、症状の緩和やQOLの改善を目指します。
脳梗塞・脊髄梗塞・貧血・アトピー性皮膚炎・肝炎・関節炎など
治療に用いる培養細胞は、無菌的で安全な環境下で管理されています。
カビ・バクテリアなどの異物混入による汚染に関しては最新の注意を払っています。
主治医から治療について詳しく説明させて頂きます。
家族でご相談の上、費用・留意点などを予めよく理解して頂いた上で治療を進めていきます。治療の決定後、動物の体調を見て脂肪の採取日を決定します。
基本的に副作用も少なく安全な治療ですが、脂肪採取にあたっては麻酔をかけることになるため、十分な体調管理が必要です。
採取から投与まで2週間かかりますが、細胞の増え方には個体差があるため、増え具合によって予定投与日がずれる場合があります。
体調が悪くて麻酔をかけられない場合や、十分量の脂肪を確保できない場合などは、同種の動物の脂肪を治療に使用する(他家移植といいます)場合もあります*。詳しくは獣医師におたずねください。
椎間板ヘルニアなどの神経疾患の場合は一般的に3回投与で終了し、経過を観察します。内科系疾患の場合は症状の経過を観察しながら継続投与を行う場合もあります。詳しくは主治医にご相談ください。
細胞は培養を重ねる度に増える能力とその機能が低下してきますので、1塊の脂肪から投与できるのは3回までとなります。施設によっては培養した細胞を一部凍結保存し、以降も治療を受けられる場合があります*。詳しくは担当の獣医師におたずねください。
脂肪採取にかかる麻酔代、培養、点滴代などが費用に含まれます*。詳しくは獣医師におたずねください。
投与に際し、30分~1時間程度かけて点滴を行います。投与後は獣医師の判断のもと、院内で様子を見て頂くことをおすすめしています。
*病院によって異なりますので獣医師におたずね下さい。