user99 のすべての投稿

犬猫が急に立てなくなった場合

犬猫が立てなくなるパターンは大きく下記の2パターンになります

 

1.さっきまで普通に歩いていて、元気食欲もあったのに急に立てなくなった

2.数日前からふらついたりしていて、元気食欲も落ちていて、だんだん立てなくなった

 

 

■1の場合に考えられること

外傷(交通事故や高所からの落下)や血栓、椎間板ヘルニア、脊髄梗塞、出血などが主な原因として挙げられます。

✔️外傷について

特に猫で多く認められます。近年、交通事故はなくなってきましたが、高所からの落下で怪我してしまう猫は稀に遭遇します。高所から飛び降りて怪我をする猫はこれを繰り返してしまうため、海外では『ハイライズシンドローム(高所落下症候群)』などと呼ばれています。この場合、立てなくなっただけではなく、内臓系の損傷も疑われるため、みだりに体勢を変えずに病院を受診して下さい。

 

✔️血栓について

血栓は猫の心臓病(特に肥大型心筋症)で生じることが有名ですが、犬でも出来ることがあります。犬は心臓以外でも血管そのものに何らかの異常が生じ、血栓が形成される場合が多く、特にタンパク漏出性腎症やタンパク漏出性腸症、免疫介在性溶血性貧血といった病気は合併症として血栓を形成しやすいため、これらの病気の犬は注意が必要です。

 

✔️椎間板ヘルニアについて

特にミニチュアダックスフンドにおいて多く認められます。首で椎間板ヘルニアを起こせば、四肢に麻痺などの症状が認められ、胸腰部で椎間板ヘルニアを起こせば両後肢に症状が認められる場合が多いです。椎間板ヘルニアは一般的に中〜高齢に認められますが、ミニチュアダックスフンドを含む好発犬種であるシーズーやビーグル、コーギー、パグなどは若齢でも認められます。胸腰部椎間板ヘルニアの診断や治療についての詳細は犬の胸腰部椎間板ヘルニアについてを参照下さい。

 

✔️脊髄梗塞について

脳から四肢を動かす指令の伝達路である脊髄に梗塞が起こってしまった状態です。脳梗塞の脊髄バージョンだと思って下さい。脊髄梗塞の場合、多くは半身麻痺を起こします。ミニチュアシュナウザーが好発犬種として知られています。有効な治療法はありませんが、半数以上の症例で自然回復が見込めますが、それまではリハビリなど日常生活のケアが必要になります。

 

✔️出血について

どこか(特に脾臓と肝臓)に腫瘍があり、それが破裂してしまうと出血を起こします。腫瘍は通常、徐々に何らかの症状を示しますが、場所によっては無症状の場合もあります。そのため、腫瘍が破裂してから初めて症状が出る場合もあります。この場合、血液が足りなくて立てなくなるのでグッタリしています。

 

 

 

 

 

■2の場合に考えること

✔️全身的な異常で立てない

発熱や、肝臓病、腎臓病などが進行し、身体がだるくて立てなくなっています。全身的な病気があってふらついたり、立てなくなっている場合はかなり病気が進行した段階のため、なんとなく元気ないといった早めの段階で病院を受診して下さい。

 

✔️神経の異常で立てない

脳に病気があると徐々に立てなくなってしまいます。脊髄に病気があっても徐々に立てなくなってくる場合がありますが、この場合、原因として先ほどの椎間板ヘルニアや脊髄梗塞以外の脊髄の病気を第一に考えます。

 

 

※通常、椎間板ヘルニアや脊髄梗塞は急に脊髄がダメージを受けるため、急に立てなくなります。しかし、脊髄の腫瘍の場合は脊髄が徐々にダメージを受けるので最初はフラつきから始まり、徐々に立てなくなっていきます※

 

 

犬の脳炎について

犬の脳炎は細菌やウイルス、寄生虫などの感染が原因で発生する感染性脳炎と、感染以外の原因で発生する非感染性脳炎に分けられます。犬の場合、脳炎の原因として圧倒的に多いのが非感染性脳炎で、免疫の異常で発生してしまう免疫介在性脳炎が大多数を占めます。

 

免疫介在性脳炎は脳に発生する変化から、壊死性脳炎と肉芽腫性脳炎の2つに分けられますが、これらの正確な評価には脳の組織検査が必要なため、生前で診断がつくことがほとんどありません。ですが、いずれの原因でも治療方法は同じため、臨床的には『起源不明の髄膜脳炎』と診断し、治療を進めていきます。

 

特にチワワやヨークシャーテリア、トイプードルなどの小型犬とパグで多く認められる疾患です。一般的にチワワやトイプードルは肉芽腫性脳炎が、パグやヨークシャーテリアは壊死性脳炎である可能性が高いです。

 

✔️症状は?

主な症状は、発作、フラつく、目が見えない、意識レベルの低下など脳が障害されている部位に応じた症状が認められます。発作は一時的な症状ですが、フラつきなどの症状は日常的に認められます。

初期症状が発作という場合もあるため、発作以外の症状がない場合でも安心は出来ません。発作の治療をしているのに発作のコントロールがうまく出来ない場合は、脳炎のような病気がないかどうか考えなければいけません。

 

✔️診断は?

MRI検査と脳脊髄液検査により診断します。これらの検査には全身麻酔が必要となります。

 

※当院にはMRI設備が無いため、検査が必要と判断した場合には提携しているMRI設備を有する病院を紹介させて頂きます※

 

✔️治療は?

免疫抑制剤とステロイドによる内科治療がメインの治療となります。しかし、完治させることは出来ず、進行を遅らせることが治療の目標となります。治療反応が悪ければ、2ヶ月位で亡くなってしまう可能性もありますが、治療に反応してくれれば1年〜3年の延命が可能です。

治療効果に幅があるのは壊死性脳炎と肉芽腫性脳炎を比較した場合、壊死性脳炎の方が進行が早いためです。また、同じ肉芽腫性脳炎でも、診断時の病気の進行程度により治療効果に幅が出てきてしまいます。そのため、早期発見早期治療が大事になります。

 

 

ちなみに....

猫の脳炎は原因として感染性脳炎が多いです。特にコロナウイルス感染により発症する猫伝染性腹膜炎(FIP)による脳炎が代表的です。この病気の治療については猫の伝染性腹膜炎(FIP)についてをご覧ください。

犬猫の股関節脱臼について

犬猫の股関節脱臼は正常の股関節から見て、①上方向(頭背側方向)に脱臼してしまう場合と、②下方向(腹尾側方向)に脱臼してしまう場合の2パターンあります。

 

 

✔️症状は?

脱臼方向にかかわらず急性の跛行(ビッコ)を示します。大体の症例で後肢を地面につけることができなくて、完全に足あげてしまいます。また、よく見ると足先が正面ではなく、変な方向を向いています。

 

■写真①の上方向(頭背側方向)の脱臼について

この方向への脱臼は後肢に垂直方向の力が加わった時に発生します。この方向への脱臼が腹尾側方向の脱臼よりも発生率が高いです。脱臼の治療方法は全身麻酔をかけて用手で脱臼整復する方法と、手術で脱臼を整復する方法の2種類があります。教科書的には手術をする前に用手で脱臼整復を行い、それでも脱臼してしまう場合には手術と言われていますが、用手で脱臼整復を行なった場合の再脱臼率は40%とされており、脱臼整復後の包帯による皮膚炎などの合併症の発生率も高いことから、手術による脱臼整復を推奨します。

 

 

■写真②の下方向(腹尾側方向)の脱臼について

この方向への脱臼はフローリングなど滑りやすい場所で後肢が滑り、『ハの字』に股関節が開きすぎることで発生します。この脱臼も用手で脱臼整復する方法と、手術で脱臼整復する方法がありあすが、この脱臼は用手による脱臼整復による成功率が80〜90%と非常に高いため、まずは用手による脱臼整復を行い、それでも脱臼してしまう場合に手術を行います。

 

 

※※※股関節の形成不全や股関節に関節炎が認められる場合※※※

 

この写真のように生まれつき股関節の成長が不十分(股関節形成不全)があって脱臼してしまう場合や、股関節の骨関節炎が重度な場合は、脱臼整復をしてもすぐ再脱臼してしまったり、骨関節炎による痛みが残ってしまうため、脱臼しても整復はせず、赤線のラインで骨を切って"関節を治す治療"から"痛みを除去する治療"へ治療方法を変更します。

 

犬の前十字靭帯損傷について

前十字靭帯は膝にある靭帯で、膝の安定した動きを維持するためにとても重要な靭帯です。

コラーゲンを主成分とする靭帯で、この靭帯を損傷してしまうことを前十字靭帯損傷と言います。人間ではサッカー選手やラグビー選手などのスポーツ選手の膝の外傷で多く認められますが、犬の場合、外傷で前十字靭帯損傷を起こすことは非常にまれで、通常は加齢により靭帯が脆弱化することで損傷してしまいます。この変性は早ければ大型犬で3歳から、小型犬で5歳から始まると言われています。

 

加齢により脆弱した靭帯が遊んでいる時や、ダッシュする瞬間などに膝に掛かる力に耐えられず、損傷してしまうため、外傷が原因と思われがちですが、根本的な原因ではありません。

ただし、犬でも外傷が原因で前十字靭帯を損傷することもあり、交通事故やアジリティの競技中に発生し、この場合は強烈な痛みを伴います。

 

✔️症状は?

後ろ足の跛行(いわゆるビッコ)です。靭帯が損傷することで膝関節の安定性が失われてしまうため、膝関節に異常な動きが発生してしまいます。それにより痛みが生じ、跛行をしてしまいます。跛行の程度は様々で、完全に足を挙げる場合もあれば、足はつけるけど歩き方が変という程度の場合もあります。

 

 

✔️診断は?

身体検査とX線検査に加えて前十字靭帯損傷と同様の症状を示す疾患を除外することで診断します。

※診断を確定させるには全身麻酔をかけて実際に肉眼で前十字靭帯の損傷を確認する必要があります。

 

 

✔️治療は?

保存療法(痛み止めや体重管理、運動制限)外科療法があります。しかし、前十字靭帯損傷は基本的に外科療法が必要な病気です。ですが超小型犬種(2kg未満)の場合、保存療法で症状の改善が期待できます(治るわけではありません)。手術方法は人工靭帯を使用する手術(関節外法)と骨を切ることで膝を安定化させる手術(骨切り術)があり、当院では関節外法を実施しています。

※関節外法の実施にはいくつか適応条件があります。

 

 

✔️手術しないとどうなるの?

関節炎が進行し、うまく歩けなくなってしまいますまた、半月板(膝関節にあるクッションの役割をもつ)も損傷してしまい、靭帯を損傷した痛みが落ち着いても、関節炎(変形性関節症)による痛みや半月板損傷による痛みと付き合っていかなければなくなります。この病気は特に関節炎の進行スピードが早いため、早急な治療が必要になります。治療が遅れると手術をしても骨関節炎による痛みが残り、術後の膝の機能回復が不完全になってしまう可能性があります。

犬の登録と狂犬病予防注射を受けましょう!

犬の飼い主には、生後91日以上の犬を登録し、毎年1回、狂犬病の予防注射を受けさせることが義務付けられています。
※狂犬病予防注射のみの方は、受付時にスタッフにお申し出ください。

ドライアイについて

犬や猫も人間のようにドライアイになりますが、自覚症状がないので気づいた時には慢性的になっており、より重症化している例が多いのが現状です。ドライアイは、涙を分泌する涙腺の分泌機能が、低下してしまうことによって涙が角膜全体に広がらず乾燥してしまい、目の表面に傷が生じる病気です。

ネコより犬に発生が多く、特に短頭腫(シーズー、パグ、ペキニーズなど)の出目の犬種に発生率が高い傾向にあります。そのまばたきをよく見ると完全にまぶたが閉じていない場合も原因として多くあるので、上まぶたと下まぶたがしっかりと接して閉じているかどうかをよく観察してみてください。「まばたき」は涙の分泌を促す刺激となりますので、まばたきが充分できていないと、涙液の分泌が低下することになります。涙液の働きは乾燥を防ぎまぶたの滑らかな開閉、角膜への酸素や栄養の補給、ごみやほこりを洗い出す働きがあります。

涙液の分泌が低下し、ドライアイになると角膜や結膜に炎症を起こし、白または黄色い粘調性の目やにが目を覆うほど出てきます。また、その目やにが眼瞼周辺の毛に付着し、まぶたを開けられないほど塞がってしまうこともしばしば起きます。軽症の例では目の表面の輝きがなくなり、炎症を起こした角膜は白っぽく濁ってしまい、重症化すると透明な角膜に黒い色素沈着が起こり、角膜全体が黒ずんで透明度を失い、視力の低下を起こします。そのまま放置すると出血が起きたり、角膜がくぼんだり、穴が開き、まぶたが癒着するなどの症状を併発する場合もあります。

初期あるいは軽度の場合、普通の結膜炎と間違えられやすく、結膜炎用の目薬等では治りません。治らない場合には、ドライアイを疑う必要性があります。その原因は免疫介在性、感染症、神経障害性、閉眼不全、老化、薬剤の副作用など多岐にわたります。また、原因が不明な場合も多くあります。まずは、眼科検査の実施をお勧めします。

原因がわかればそれに対応しますが、原因を特定できないこともよくあります。その場合の治療は対症療法が主となります。人工涙液の点眼や眼瞼マッサージなど、涙液の補充や分泌補助などの処置を施しながら、必要であれば細菌感染に対して抗生物質の点眼の使用も含め対処していかなければなりません。また、最も多い原因には免疫介在性のドライアイがあり、さらに免疫抑制剤の点眼薬の使用を加えることになります。また、再生医療の分野から新しい治療の試みもはじまり、劇的に症状が改善される例もありますので、是非当院にご相談ください。

ペットの年齢

■いつまでも子どものように思えるペットも、確実に歳を重ねています。

多くの飼主様もご存知のように、ペットの加齢は急速に進みます。私たち人間が、加齢とともに体調や体力に変化が生じるように、いつまでも子どものように可愛らしく元気に見えるペットも、年齢を重ねるにつれ、外見からは見えない変化を迎えているのです。
この機会にあらためて、ご自身のペットの年齢を意識することで、これまで見過ごされていたペットの変化に気づくかもしれません。

■ペットの予防は「健康な時」から。
治療の前に予防の大切さを知ってください。

私たちの願いは長寿はもちろん、ペットの一生の内の「健康な時間」を延ばしていくこと。「健康な時間」が延びることは、飼い主様と一緒に過ごす時間の充実にもつながります。
ペットも高齢化時代を迎え、その「健康寿命」を延ばしていくためにも、病気が見つかってから治療を行うのではなく、健康な時から病気を未然に防いでいくことを目指す「ペットの予防」が大切なのです。

犬・猫の年齢 1歳 2歳 3歳 4歳 5歳 6歳 7歳 8歳 9歳 10歳 11歳 12歳 13歳 14歳 15歳 16歳 17歳 18歳 19歳 20歳
人に換算すると
(歳)
小型犬 18 24 28 32 36 40 44 48 52 56 60 64 68 72 76 80 84 88 92 96
中型犬 18 24 29 34 38 43 48 53 59 64 69 75 80 85 91 96 101 107 112 117
大型犬 17 24 32 40 48 53 59 64 69 75 80 85 91 96 101 107 112 117 123 128
20 24 29 34 38 43 48 51 54 57 61 64 67 70 73 77 80 83 86 89

※年齢はあくまで目安です